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島崎の実力はよく知っている。
中学時代、一緒に組んでいた時はとても心強かった。
が、紅白戦などで敵に回した時は、脅威になったのも覚えている。
望んでいた試合なのに、東は避けて通れないかと考えてしまった。
「き、今日は、こいつがキャッチャーやるからな!」
東は倉橋の背中を、ポンッと押した。
倉橋は体勢を崩しながら、前に出た。
しかし、すぐに体勢を立て直して、親指を立てて笑った。
「おう!俺がキャッチャーやるからな!この試合、もらったな修吾!」
うそだ。
倉橋の力で勝てるなら、東や新谷の力で甲子園までいけそうだ。
もちろん、例えであるが。
「つか、涼太がキャッチャーやってるなんて、似合わないな~」
立花が意外そうに言った。
ちなみに、忘れている方が多いと思うので一応言っておくが、涼太とは倉橋の下の名前である。
「似合わないとはなんだ、似合わないとは」
倉橋が「似合わないってどういう意味よ!失礼しちゃうわ!プンスカ、プンスカ」といった調子で、腕を組んで鼻息を荒くした。
「ま。そのままの意味だけどね」
立花は舌をペロッと出した。
「とにかく、倉橋はともかく負けるつもりはないから」
東は倉橋の前に出て、島崎と向き合う。
島崎も一歩前に出て、東と向き合った。
「望むところだ」
島崎はさらに笑った。
と、そこに「いた!」という声が聞こえてきた。
声のした方を全員が見ると、春がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
春は東の元へ着くと、膝に手をついて「はぁはぁ…」と肩で息をする。
「わっ!春ちゃん、どうしたの?」
東がそんな春を見て、顔を覗き込んだ。
春は少しかすれた声で言った。
「し、新谷君が……はぁはぁ……そろそろ戻って来いって…」
その様子を見ていた立花が、春に向かって話しかけた。
「こんにちは」
「え、あ、はい、こんにちは」
「名前、なんてーの?」
「えと、小波です。小波 春」
「春ちゃん?私はね、立花 綾香。よろしく」
「あ、はい、立花さんですね。よろしくおねがいします」
「綾香でいいよぉ、タメなんだし。あれ、タメだよね?」
最後は東と春を、交互に見て言った。
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