島崎 修吾

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三塁側ベンチに来て、そこからグラウンドに出て驚いた。 観客が多い。 1回戦とは、まるで人の量が違った。 今日が休日だという事もあるのだろうが、それにしても多い。 2回戦の時も、東たちは同じようにして驚いていた。 「1回戦よりも人が多い!」 そう言って、皆で騒いだ。 とにかく、観客が多いのは緊張する。 東や新谷は昔からの事で馴れているようだが、倉橋たちにしてみればこれほど緊張する事はない。 桜見大側のスタンドには、桜見大の生徒も見に来ていた。 2回戦を勝った事で、 「なに?うちの野球部って強いの?」 「じゃあ、次の試合の日は学校休みだし、いっちょ応援にでも行って来ようかしら」 「そうしましょ、そうしましょ」 てなもんで、桜見大の生徒も紛れているのだ。 これは、恥ずかしい試合はできない。 ひとつ、気合いを注入せねば。 「春ちゃん、頬を叩いてくんない?」 「へ…?」 春はまだ目が点のままである。 気の無い返事をした。 「目が点はもういいから、頬を叩いてくんない?ほら、ここをバシーンッ!と」 「ここを叩けばいいの?」 ようやく目が点じゃなくなった春は、東の言われた通り叩こうと手を振り上げた。 勢いよく手を振るう。 バッチーーーンッ!! ベンチ内に、結構痛そうな音が鳴り響いた。 左の頬を赤くして、東が少し涙を流す。 予想以上に痛かった、春のビンタ。 「なんだ…?」 新谷がキョトンとした顔をする。 「いや、何でもない…」 東は左頬に真っ赤な手形をつけたまま、涙目に言った。        * 「「おねがいしゃーっす!!」」 挨拶が済むと、大荷第一の選手はグラウンドに散った。 軽くボールを投げ合って回す。 1番バッターは江原からだ。 大荷第一の投手の迫(ハク)が何球かの練習球を投げ終わり、江原がゆっくりと右打席へと向かった。 1回戦では外野には左から、寺澤、田中、清水だったが、今回は寺澤の代わりに江原を起用した。 正直、寺澤より江原の方が能力は高いのだ。 足を活かすために江原をセンターにした事で、田中をレフトへ動かした。 清水は、そのままだ。 《1回の表、桜見大高校の攻撃は、1番、センター、江原君。背番号10》 江原が右の打席に立ち、バットを構えた。
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