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「あぁぁぁぁあ!」
倉橋は柵に手を掛け、身を乗り出して自分のクツを探す。
東は「あ~あ…」と言いながら、池の方を見ていた。
それを見た倉橋はますます慌て、気付けば東の胸ぐらを掴んでいたのだった。
「お…おま…お前~!」
倉橋の手は、いつの間にか東を前後に揺すっている。
しかし、東はヘラヘラと笑っているばかり…。
「お前、とってこい!」
「え~?俺のせいじゃないし~」
東は…お前が足を振るのが悪い!と言わんばかりのニヤけっぷりを見せていた。
しかし、次に倉橋が放った一言で、東の態度を改めさせたのだった。
「あ…、めっちゃ可愛い娘が下にいる…」
「さ~て、倉橋のクツをとってこよ~っと」
何と単純な男であろうか…。
東は屋上にある扉を開け、階段をかなりのスピードで駆け降りて行った。
すぐに1階に着き、そのまま右に曲がる。
池の前に着くと、東はキョロキョロと辺りを見回し始めた。
倉橋のクツを探しているわけではない。
倉橋の言う、『めっちゃ可愛い娘』…。
しかし、2・3度首を動かすものの、そんな人物は何処にもいなかった。
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