始まりの靴

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ふと上を見上げると、倉橋が屋上で笑いながら、何か口を動かしている。 『ば』と…『か』…だろうか…? 「馬鹿ぁ!?」 騙された…。 そう思うと腹が立ち、池の中から倉橋のクツを拾い上げ、グラウンドの方へ思いっきり投げてやった。 流石に中学時代に野球をやっていただけあって、倉橋のクツは水しぶきを上げながら勢い良く飛んでいく…。 どんどん飛んでいき、クツが池を囲む植木を越えた時だった。 「わ!冷たっ!」 そんな声が聞こえた。 明らかに女子生徒の声…。 東の顔は笑顔に変わった。 いや、ニヤけていたかも知れない…。 こうなると東の足は速い。 すぐさま向こう側にまわり、女子生徒に話し掛けた。 「だいじょぶっすか!?」 東はそう言いながら、たまたま3日くらい前からポケットに入っていた青いチェックのハンカチを取り出し、女子生徒に差し出す。 そして側にあるクツを拾うと… 「やや!これは僕の友人のクツ! ややや!屋上に友人が! 全く…、濡れたクツを屋上から投げるなんて最低だな! 俺が後で、ボッコボコに締め上げておきますよ!ハハハ!」 勝手に話し出すのだった…。
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