――童話――

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しばらくして私は、ようやく自宅にたどり着いた。 ―――ガチャ ドアを開けて、家に入ろうとした時、郵便物があるのを見つけた。とは言っても、ただの手紙…。 宛先は―――――明月 舞 贈り主は―――――不明 私は、手紙を持って部屋に戻った。 ――――コンコンと ドアをノックする音…。 すると母が、「夕食出来てるわよ?」と部屋の前で言っている。 「ごめん、お母さん。まだお腹空いてないからいいや。」 「じゃ、じゃあ、先に食べてるわね…。あ、後、明日夜まで仕事だから作り置きしとくから…。」 「うん…。」 いつもといっしょの会話。たったこれだけ…。 お父さんが一年前に亡くなって話す回数は、すごく減った。 母さんの仕事もあるけど、生前、私がお父さんにべったりだったからだと思う。 シン・・・。と静かになった部屋には、寂しさが広がっている。 「読むか…。」 涙をこらえながら小さな声で呟いた。
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