火蓋

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「矜持とは? プライドって意味ですかね」 犯識が、懐から得物を取り出す。 「じゃあ巣守のプライドとは? 正々堂々相手を打ち砕くことですか」 その得物は有り体に言えば、白い紐に取り付けられた鍵。その鍵の特異点を挙げるとすれば、鍵には有り得ない大きさであること。 「巣守の矜持とは? 正々堂々というプレイヤーの誇り。お家柄なんですかね? みんなそうなら、零崎側は今回楽出来そうですね」 白紐の部分を握り、幾度も振り回して空に投げ。 「巣守の矜持があるというなら、零崎の矜持はあるんですかね?」 自問自答の呟きと共に、落ちて来た大鍵【皮肉論破】が、犯識の右手に握られ、その切っ先が鍔芽へと向けられる。 険しい顔を作る鍔芽。 「主は何物だ・・・?」 「僕は零崎犯識です。零崎犯識。己が獣と認識する人で無し。・・・お互い名前を名乗ったところで」 その全身に、殺意を燻らせて犯識は見栄を切る。 「零崎の矜持を思考することから始めましょうか」
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