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◇広原◇
目を覚ますと見たことのない景色が僕の視界に飛び込んできた。
清く澄んだ空には伝説の龍が飛び交い、緑が覆う大地には見たこともない植物や動物がこの広い陸を埋めていた。
遠くには町が見え、太鼓や笛などの高らかな音が響いていた。
「どこだここ?確か僕は自分の部屋にいたはずだけど・・・」
これは夢だ。もうすぐ親が起こしてくれる。「また寝てるの?勉強は?」と尋ねてくる、・・・と。
しかし僕の幻想は一瞬で砕かれた。
目の前に巨大な猪が現れたからである。獰猛な目を光らせ僕を睨み付ける。体格は、僕の二倍はあると思う。
それは、人間が本来持っている野性の感を呼び起こすには十分過ぎた。
「俺は、こんな訳のわからない場所じゃ死にたくない!死んでたまるか!」
心からそう思うと何故か体が軽くなった気がした。
真っすぐ立ち猪と向き合う。
当然、勝つ手段などありはしない。口から出た単なる言葉でしかない。
だけど・・・これだけは・・・貫き通したいと思った。
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