第1話『あ、あのさ……わ、私とさ――』

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「よ、よく分からないけど……ご、ゴメンッ!!」  リア子はそう言って、『あめふり!』7巻を持ったまま走り去っていった。  残された俺は、すぐさま脚をどかして自ら70発ぐらい殴った後、足元の小説を拾い上げる。  くっそ……言葉にならねぇ……。俺は大好きな愛芽たんを足蹴に……!! 「よ、よく頑張ったよお前は……」 「そうだよ……咲」  稜と栄太も俺の背中を摩りながらそんな声をかけてくる。  コイツらもまた、泣いていた。 「ああっ! お、お客さん、何やってんだ!!」  俺たちの元へ、店員らしき男が近寄ってきた。  彼は俺が手に持っている『あめふり!』を指差して、睨み付けてくる。 「そんなに汚しちまって! 詳しい事情を聞かせてくれるかね!? ったく、君達みたいなオタクってのは、ホントよう分からん行動をするね!」  詳しい事情、だと……!?  そんなもん……詳しく説明するまでもない……! 全部リア子のせいだってのに……!  俺は本屋中に聞こえるぐらいの大声で、こう叫んでやった。 「こういう趣味なんですッッ!!!!!!!!」 「はァ!?」 「ヒロインをこう、自分の靴で踏みつけてドロドロにしてしまうのが趣味なオタクは、世にいくらでもいますっっ!!」  それはオタクというものを正しく認識していないその店員には、抜群に通じる嘘だった。  俺、グッジョブ! でも……涙が止まらない……! 「この汚れ本と、まっさらな一冊、下さいッッ!!」  
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