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「よ、よく分からないけど……ご、ゴメンッ!!」
リア子はそう言って、『あめふり!』7巻を持ったまま走り去っていった。
残された俺は、すぐさま脚をどかして自ら70発ぐらい殴った後、足元の小説を拾い上げる。
くっそ……言葉にならねぇ……。俺は大好きな愛芽たんを足蹴に……!!
「よ、よく頑張ったよお前は……」
「そうだよ……咲」
稜と栄太も俺の背中を摩りながらそんな声をかけてくる。
コイツらもまた、泣いていた。
「ああっ! お、お客さん、何やってんだ!!」
俺たちの元へ、店員らしき男が近寄ってきた。
彼は俺が手に持っている『あめふり!』を指差して、睨み付けてくる。
「そんなに汚しちまって! 詳しい事情を聞かせてくれるかね!? ったく、君達みたいなオタクってのは、ホントよう分からん行動をするね!」
詳しい事情、だと……!?
そんなもん……詳しく説明するまでもない……! 全部リア子のせいだってのに……!
俺は本屋中に聞こえるぐらいの大声で、こう叫んでやった。
「こういう趣味なんですッッ!!!!!!!!」
「はァ!?」
「ヒロインをこう、自分の靴で踏みつけてドロドロにしてしまうのが趣味なオタクは、世にいくらでもいますっっ!!」
それはオタクというものを正しく認識していないその店員には、抜群に通じる嘘だった。
俺、グッジョブ! でも……涙が止まらない……!
「この汚れ本と、まっさらな一冊、下さいッッ!!」
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