第1話『あ、あのさ……わ、私とさ――』

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「あ、忘れ物を思い出しました。僕は一旦家へ戻る事にします。ガチャリっと……」  アホ程下手な嘘をつき、俺は一旦家の中に戻った。  な、何なのあの女。何あの執念。  女の執念は怖いって、こういう事なの?  女の子にここまで付き纏われた事ないからわかんね。  ……おい、我ながら何だ。今の自慢げな台詞は。  違うんだ聞け、正直言ってめちゃくちゃ怖いんだぞ俺は!  相手は明らかな俺の敵なんだ。  そんな奴が今家の前まで来てるとか……大ピンチだぞ!  どうせあれだよ、俺がどんだけ無視しようが、「彼女いないとかマジだっさーい」的な事を延々と言われんだ!  絶対言い返せないぞ俺! ビクビクしながら小さくなって脅えるしか出来んぞ! 「……何してんすか? 咲」 「ゑ?」  不意にかかった声に振り返ると、鞄を持った制服姿の芽衣が居た。  イヤァ……何って……ねぇ? 「さっき出てかなかったっけ……。……もしかしてついに、不登校すか」 「……何だと思ってんの? 俺を」 「JK予備軍」 「……は? 何? 女子高生予備軍?」 「自宅警備員予備軍」 「いやニートじゃねぇよ!?」  妹にそんな風に思われる俺って何なの?  俺一応、小学校に上がってから今まで、無遅刻無欠席なんだぞ。  謹慎とかも喰らった事ないし。  これって「無遅刻」的な感じで言うとどうなるんだろ。  ……「不謹慎」?  そうだ! 俺不謹慎なんだぞ!  エッヘン!
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