第1話『あ、あのさ……わ、私とさ――』

16/31
前へ
/335ページ
次へ
「と、とりあえずお前は早く行け! 俺ちょっとお腹痛いからよ! アイタタタ……」 「……怪しすぎる……」  怪訝そうな表情をしながらスニーカーを履いた妹は、玄関戸に手をかける。  ――て、しまった! 今外に出たらリア子が……! 「や、やっぱ待て芽衣! 今は外に出るな!」 「ハァ? 何言ってんす……」  言いながらドアを開ける芽衣。 「…………か」  外に居たリア子と芽衣の目が合った。  リア子はポカンとした表情。妹はアングリと口を開け、しばし硬直。  やがて芽衣は、まるで巻き戻されるかのような動きで玄関のドアを閉ざした。  そして引き攣った顔で外を指差しながら、ガクガク震えてこっちを見て、 「…………彼女?」  と問うてくる。 「違うッ! 断じて違うぞ芽衣!!」 「う、嘘……! じゃあ何でうちの前にいるんすか……!? 彼女以外に考えらんないんすけど……」 「だから! 話を聞けって! お前今すげぇ勘違いしてっからね!?」  俺が必死に否定しても、芽衣は一向に信じようとはしない。  いや何で信じない! 俺の場合、彼女居ないって方が自然だろ!  彼女居たら不自然だろ! 俺みたいなんに! 「じゃ、じゃあアレは何……」  芽衣が意味解らん程睨みつけてきやがる。  ひ○はちゃんのごたる恐ろしさ。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4090人が本棚に入れています
本棚に追加