第1話『あ、あのさ……わ、私とさ――』

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「と、とりあえずアイツは、俺の敵なんだ! 俺今、ついに本丸まで攻め込まれた戦国武将的な感じ! オーケィ!?」 「ぜ、全然オーケィじゃないんすけど……」  あぁっ! 何だよコイツ!  普段俺の事なんか、飛ばして壁に張り付いたハナクソ程度にしか思ってないクセに!  何で今日こんなにしつこいの?  くっそ、やむを得ん! こうなったら芽衣も敵だ!  俺は靴を脱ぎ手で持って、台所の勝手口へ向け走り出す。  裏口から塀を上って、ほかの家の塀とかもスイスイと渡って別の道に出ればいい!  それでリア子から逃げられる! 「ま、待て!」  芽衣の野郎、わざわざ履いたスニーカーを脱いでまで追い掛けて来やがる。  くんなよ! お前が気にする事じゃねぇよ!  台所へ入り、洗い物をしている母親の後ろを通って勝手口にたどり着く。 「咲? 何してるのよ貴方! 学校は?」 「今から行く!」 「ハァ……?」  勝手口を開け、靴を放り投げる。  よし、脱出成功だ……!  が、 「待てってば!」 「オゲェッッ!!!?」  芽衣の声と共に、後頭部に10tトラックに激突されたかのような衝撃が走る。  振り返ってみれば……ウオ! 芽衣の野郎、フライパン投げてきやがったのか!  包丁じゃなくてよかったけど、俺を殺す気なのはよくわかった!  だが……ここで倒れる訳にはいかん!  激痛に堪えながら靴を履き、ダッシュで塀を上った。
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