第1話『あ、あのさ……わ、私とさ――』

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「さ、咲……!!」  背後から聞こえる妹の俺を呼ぶ声を無視し、俺は塀の上を渡ってそのまま裏の道へと出て、あとはただひたすら走った。  頭クラクラするけど、俺主人公だし死ぬわけないから、とりあえずそのまま学校へと向かった。  ● 「り、リア子の野郎、遂にお前ん家まで突き止めやがったのか……」 「何でバレたんだろ……? 実は咲が気付いてない時に、後ろからつけられてた日があるのかもね」  放課後の教室。  俺はいつも通り稜と栄太と3人で集まって非リア充トークを繰り広げていた。  主に、今朝の事について。 「全く……! 苦しい戦いだったぜ……」  俺はそう呟き、頭の未だに痛む部分を手で摩る。 「……で……その頭の傷は、リア子から逃げる際に負ったってわけか……」 「いや……これは……妹にな」 「……は?」  俺の言葉に、稜が首を傾げる。  傾げたくなる気持ちはよくわかる! 俺だって傾げたい! 「何で妹さんに、そんな今すぐ何針か縫わないと治らなそうな傷を……」 「いや、俺にもさっぱり」  栄太の抱く疑問にも、俺は答えられない。  本気で訳解らんもの。 「ていうかよ……咲」  稜が何やら難しそうな顔をして言う。  何だよ。
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