1、飢え渇きセンシティブ

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 過ズ夏のケーキが入った箱を置き、施錠された門をよじ登る。月明かりに晒された人影は、どうやら春日川高の女子生徒のようだ。制服に見覚えがある。  門を降り、彼女の元へ一気に駆け抜ける……訳にもいかず、すぐに岩に阻まれた。近くで見ると恐怖すら覚えるほどの巨大さだ。背丈百七十の俺の二倍、いや三倍くらいか? これが校庭を埋め尽くしているというのだからぞっとする。  岩はやはり地面にめり込んでいた。とてもじゃないが人間に動かせる代物ではない。だが人が通れるくらいの隙間はあったので、なんとなくだが、岩には極力触れないように進んだ。それ、爆発します、とか言われたら八割信じるだろう。  ようやく辿り着き、息を吐く。岩々に囲まれるようにして倒れ臥す少女の姿は、あまりにも痛々しかった。  制服は所々破れ、本来なら白い輝きを放っているだろう肌には赤い点が散り、豊かな金髪は濡れていた。露わになった太ももになど興味はない。断じてない。……いや、ちょっとはある。それより、  真っ赤な水溜まりを初めて見た。  呆然とする。け、携帯携帯どこだ。119だ。いや110か? 両方だ携帯は携帯どこだおいああ急げ早く過ズ夏に殺されるかもだが仕方ない今はこっちを急げ! 「……へえ、動けるんだ」  背筋に走る冷たい感覚に、オーバーヒート気味の脳味噌が一気に凍る。勢い良く見上げると、馬鹿でかい岩に腰掛ける、銀髪超絶美少女がこちらを見下ろしていた。
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