1、飢え渇きセンシティブ

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 それは綺麗とか可愛いとか、そんなものではなくて。端正な顔立ちに、骨のように白い頬に貼り付いた銀の髪は風を帯び、満月を背に、春日川高の制服に身を包んだそいつは、冷酷な笑みを浮かべ―― 「おうっ!?」  見失った。刹那、咄嗟に伏せる俺の頭上を、何かが掠める。な、なんだ何がどうなってる。襲われてるのか? 何故? なんだなんだなんだおい、なんでだよ。  妹の誕生日に選ぶプレゼントを間違えて、怒鳴られ蹴られ罵声を浴びせられ夜も遅いのにケーキまで買って、帰宅途中に何故か殺人鬼に狙われて、はは、過ズ夏には悪いが厄日だなこりゃ。  日本刀を引きずる美少女は、情けなく転がった俺に目を向け……ってぇ日本刀!? 「ま、待って、落ち着けオゥケーイ、落ち着け。なんだてめえはなんだよなんでこの子が、そうだこの子を助けないとお前携帯持ってないかおい! なんだそれなんだ危ねえ」 「五月蝿い」  俺は黙った。凄く黙った。多分植物よりも静かなんじゃねえか、だって俺息してないし。判定、心音がでか過ぎて負け。これは不可抗力だろが。  有り得ないと思う。怖い。目の前で起こる現実に頭がついて行かない。やや苛立った声色。どうやら、確実な事が一つある。  俺は死ぬ。
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