1、飢え渇きセンシティブ

5/14
前へ
/14ページ
次へ
 ゆっくりと距離を詰める美少女。岩に阻まれ逃げ場がない俺。倒れている血塗れの少女。  日常とかけ離れた景色がある。距離ゼロ。無理。死ぬ。彼女の細腕がゆらりと刀をもたげ、その刃が俺を睨む。  瞬間――  彼女の腹部が勢い良く裂けた。銀色の髪が揺れる。ごぼごぼと溢れる血。口紅を塗ったみたいに真紅に染まった口角を上げて、美少女は笑う。 「解除したっけ? ああ、こいつの力か……」  彼女の腹を貫通し、俺の眼前数センチで停止する物体は……岩だった。鋭く尖った先端からは、一滴、また一滴赤が落ち地を汚す。  俺を襲っていた美少女は、背後から、先程まで血溜まりに沈んでいた少女に破壊されていた。  何が起きた? さっきまで倒れていた少女が、不敵な笑みを浮かべている。銀髪美少女は自身に突き刺さる岩を切り落とし、引き抜いた。また一つ血溜まりが出来る。  傷口は暗くおぞましく、俺は耐えきれず嘔吐した。だが彼女は、獲物に狙いを定めて日本刀を振るう。凄まじい速度で襲うそれを、突如現れた岩が防いだ。しかし岩は切断され、金髪との距離は詰まる。  再び生える岩。今度は銀髪が守りに転じ、刀身で受ける。岩は映画のワンシーンのように綺麗に両断され、彼女の後ろに消えた。だが、防がれるのを見越して放たれていた蹴りが、傷付いた腹部を弾き、連なる岩々を巻き込んで細い身体を後方へと吹き飛ばした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加