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 学校帰り。私は、駅のホームに並んで電車を待っていた。  特に何をするでもなく、空とか人とかをぼーっと眺めながら。  いまにも雨が降り出しそうな、鉛色の空。  あ。  隣の車両の列に並んでいる女子に見覚えがあった。私と同じ制服、同じ校章。つまり、同じ高校、同学年。  誰だっけ…?  肩ぐらいまでの髪をおろしていて、やたらと前髪が長い。しゅっとした輪郭。  確かに知ってる、気がする。…ああ、出てこない。モヤモヤする。  間もなく、3番線に電車が参ります。黄色い線までお下がりください――…  アナウンスが聞こえたけれど、私はモヤモヤしたままが嫌で、なんとか思い出そうと彼女から目を逸らせずにいた。  その時。  彼女が、ふわり、と黄色い線を踏み越えた。  あぶない
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