『空に浮かぶ学園』

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僕は廊下を走る。1人の女性の腕を掴みながら。背後から迫り来る圧力に精神が押し潰されそうになりながらも懸命に走っていた。その存在すら確認できないのに。止まったらヤバいとゆう感情だけが僕の足を動かした。 そこは空に浮かぶ学園で、薄茶色の建物が5棟程に別れ、それぞれを細い渡り廊下で繋がっていて各々個性的な出で立ちをしていた。 僕が居る棟は廊下の幅が10mくらいの曲線状に彎曲している建物で弓なりの壁は天辺から下に垂れ下がり反対側が吹き抜けになっている。壁にはルネッサンス調の彫刻が散りばめられており歴史を感じさせられた。 必死で走っているのは僕と彼女だけ。ストレートの長い黒髪を靡かせながらキリッとした整った顔に不安を浮かばせながら彼女も走る。華奢な手首が僕の引く握力で少し赤みがかっていた。 参考書を読みながら歩くリュックを背負ったメガネの男、雑談しているカップル等の間をすり抜けながら必死で走った。 視覚では確認はできないが確実に背後からの追っ手が近づいてくる。 僕達は隣の棟に移り空中を移動するエレベーターへ乗り込んだ。エレベーターと言っても粗末な作りで丸い2畳程の石畳に柱が6本立っていてそれに屋根が着いただけだ。 しかしそれは僕達と追っ手を隔てるのには充分だった。 漸く緊張感から少し解き放たれた僕達は胸をなで下ろした。 約3分程の移動時間を経て円柱形の広い建物に行き着いた。中に入ると天井は丸みを帯びていてフィレンツェのドォーモの様な形をしている。中空でただ広いスペースを覆うようにワインレッドの様々な刺繍が施されている絨毯が敷き詰められており、壁には一面の書物がずらりと規則正しく陳列されていた。正面には約8m程の大きなステンドグラスの扉が僕達を招き入れんばかりに輝いていた。 扉の取っ手は意外にも小さく、そして少し力を入れただけで簡単に開いた。 一歩踏み入れ辺りを見回すとそこはまるで別世界だった…。
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