ただの心優しき魔女っ子さ

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ここから遠く、東洋の島国には鬼と呼ばれる伝説上の怪異がいると聞く。 全身が炎のように赤く、閉口していても納まらぬ凶悪な牙、野獣じみた眼光、人の身の丈を優に超えた図体の大きさ。 加えて、鉄の刺がついた、見るも禍々しい金棒を担いでいるというのだ。 まさしく醜悪の極み。一回だけ絵を見たことがあるのだが、あれは確かに恐ろしい。 けど、目の前にいる鬼とは似ても似つかない。 体長は3mってとこかな。首から上は何もなくて、腕は丸太のように太く、細い体躯とはあまりにも不釣り合いな体型をしてる。 足も枝のように細くて、移動するときには腕を足代わりに使用してるみたい。 鬼の外見はバラバラ。 鬼巣によってある程度の決まりはあるみたいだけどね。 ここの鬼巣は……首なしかな? とりあえず見た目からして温厚そうな種じゃあなさそうだわね。 呆れて息を吐いたときのこと。 鬼はいきなり武骨な腕を金棒のように振り回してきた。 「あらよっと」 命中するはずもなく、軽く地面を蹴って後ろへ跳んで攻撃を回避した。 距離を空けすぎるとあたしが攻めに転じられないと思って、紙一重のところでかわしたのだけど……。 「うわっ、と!」 乱暴に掻き乱された空気が、あたしを巻き込んで吹き荒れる。 思わず転びそうになったけど、なんとか転ばずにいた。 ……一発喰らったらお陀仏ってかい?
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