4人が本棚に入れています
本棚に追加
「よそ見してんじゃねぇ!!クソ女がぁ!!」
鼻先を刃が掠める。
無意識下で空を仰ぐようにして頭を引いていなければ、死ねただろうに。
そんなつまらないことを考えていた。
「すまない、少し寝ていた」
昔の夢から覚めると、目の前には盗賊風の大柄な男。
その手には長刀。
盗賊が持つには中々に豪奢な作りの長刀に見える。柄と鍔の装飾からしても明らかに高価なことに違いない。
大方盗んだのであろう。見てくれが豪華な代物を盗むのが盗賊の特徴だしな。
それに頭が弱いことも盗賊共の特徴だ。
あれは明らかに武器には不向きだ。
振る度に金と鎖の飾りが手に当たるし、その分無駄に重くなる。それに何より、装飾同士がかち合って耳障りだ。
しかし、これが現代の真っ当な刀の姿なのだから、誰も気に留めない。
今回はたまたま私が帯刀していたから気になるだけだ。
「ふざけたことを抜かしやがって……!」
別にそんなつもりはなかった。
しかし私の発言は彼の機嫌をすこぶる損ねたようで、刀を上段に構えて襲いかかってきた。
意外と構えはしっかりとしていて、剣士そのものに見えた。
成る程。
こいつも私と同じか。
最初のコメントを投稿しよう!