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全身から水を滴らせ激しく肩で息をしながら、大事そうにビニール袋を抱えた助手が立っていた。
「はぁっ、はぁ、こんにちは探偵」
挨拶をしつつ、ずぶ濡れのままフラフラ入ってくる。
2人は呆気にとられ、助手が倒れるように座るのをただ見つめた。
「晴山君……どこ行ってたの?ていうかすごい滴ってるよ、拭きなよ」
壱花が鞄からタオルを取り出して助手に渡した。助手は黙って受け取ると手や手首の水滴を拭き取りすぐに返した。
「イヤイヤイヤイヤ髪を拭きなさいよ!!」
すかさず突っ込みを入れながら再びタオルを返す壱花。
「嫌です。この鳥打帽は自分のトレードマークですから」
と助手。壱花はハアー、これだから男はと呟き助手の背後に回り帽子を取って探偵に投げた。どこまでも運動神経がアレな探偵は慌てて身を乗り出したが帽子は机に乗っかった。
「何するんですか」
「ちょっと黙ってて」
ピシャリと早口に言うと徐にタオルを助手の頭に被せた。
「じっとしてるんだよ!拭きづらいから!」
「君は母親ですか」
しかしこれといって抵抗するでもなく黙って頭をグシャグシャされている助手。
まるで母ちゃんに捕まったヤンチャ息子である。
「ココアシガレットが切れたんで買いに行ったんですよ。そしたらタイミング悪く雨に降られましてね……でも無いと死んでしまうので急いで買って戻ってきたんです」
「わざわざ学校にか?」
「ええ。だって……」
「?」
「絶好の怪談日和じゃないですか」
ニヤリと助手が笑った瞬間、辺りが白く光りドドォンという雷鳴が轟き、校舎が縦に揺れた。
「っわ、でかっ」
「今の、校舎に落ち……」
探偵が言いかけた時、教室が不意に闇に包まれた。
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