その男、適当助手

5/5
前へ
/123ページ
次へ
「もっともな事言わせてもらうけどさあ……」 一息置いて、探偵は声量を上げた。 「なんで君の時はインタビュアーが居るの?いつ出現したの!?ってか、誰なんだ!!」 「知りませんよ、そんなの(怒)」 「(怒)をつけるな、腹が立つ!!」 ――その時だった。 窓枠に何か白いものが付着しているのを見つけたのだ。 助手はそれが何か理解した途端、畏怖と驚愕に目を見開いた。 「と……鳥……の、フン……」 「うるせー!!いちいちどうでもいい演技すんな!大体予想ついたし」 助手はすぐにいつもの表情に戻ると、桟に頬杖をついた。 「だって、何も起きないじゃないですか。少しぐらいミステリーな雰囲気味わいたいんですよ、自分だって」 窓の外は、いつの間にか雨が降り出していて、早くも鳥のフンが溶かされ始めていた。 助手の言葉を聞いた適当探偵は、フッ……とキザに笑った。 「馬鹿だな、君も」 「君もということは探偵も馬鹿という事ですか」 「ミステリーなんて見つけようと思えばどこにでも転がっているものさ。ほら、今だって……密室、2人の男、エロ本、PSP、雨の音、鳥のフン。――こうして並べると、謎を解くキーワードみたいで、ワクワクしてくるだろう?」 「全然……」 助手は食わえたシガレットを上下に動かしながら、呟いた。 「むしろ、キーワードの最初の方は非常にいかがわしく聞こえます」 「……むしろ、歩くエロスは君の方だろう……いや、歩くBL本か」 2人を嫌な湿気で包むように、雨は降り続いた……。 ――伊井華幻高校は今日も平和である。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加