その男、適当探偵

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「はーいそこのみんなー!!ぼくに注目~!!」 パンパンと手を叩きながら探偵が声を張り上げると、集団はまるでプロのバックダンサーのごとく一斉に振り向いた。 あまりのキレの良さに探偵は少したじろいだが、続ける。 「君達、今すぐにそんな謎の行進は止めるんだ!このぼくが適当探T……」 探偵がそこまで言いかけた時、集団の目の色が変わった。どのくらい変わったかといえば、鬼束ちひろが 『大変だ!事件だ!適当探偵を呼べ!!』 次の瞬間、集団は探偵目掛けて物凄い速さで突進してきた。 「うわあああ!!コワいいい!!?ちょっ……君た……ひぃーーーーッ」 短距離走は遅いのだが逃げ足だけは誰にも負ける自信がない適当探偵は、全速力で廊下を駆け出した。集団はその後をついていく。 物凄い勢いで探偵と集団が鬼ごっこをしながら学校の玄関から出ていくのを、助手は階段の手すり越しに眺めていた。 全員が出て行ったのを見届けた後、彼は手すりに背中からもたれかけ、ココアシガレットを口に食わえ一服のポーズをとった。 「……フー」 息を吐きながら、2本の指で挟んだシガレットを口の前に持ってくる。 「さて……これで今日の厄介者はいなくなったな」 助手は目を閉じて無表情だった顔に薄く笑みを浮かべた……。 ――伊井華幻高校は今日も平和である。
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