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それを言ったのは、当然助手であった。
明らかにその言葉を聞き無表情になった壱花を見て探偵の顔が強張る。
探偵が止める間もなく壱花はつかつかと助手に歩み寄った。
「……何?晴山君。私に何か言いたい事でもあるのかしら?」
「助手2号こそどうしたんです?今のはただの独り言です」
助手は読んでいる本から目を離さず言い切った。
壱花はふうん、と若干高めの声で相槌を打ち続ける。
「挑発してくるなんていつもの貴方らしくないじゃない。私を騙して他の男に押しつけて弄んでいた貴方が」
壱花は最後の方で語気を強め皮肉に言い放った。まるでその言葉だけを聞くと昼ドラのようなドロドロした感じに聞こえる。
危険な予感がしたのだろう、二人の間に探偵が遠慮がちに口を挟んだ。
「や、やめないかキミたち。子供じゃないんだから言い争いなんて……」
「黙ってて下さい日間野さん!!……私貴方のことも完全に許したわけじゃないんですから」
「……うっ!」
計画とはいえ壱花を騙して見知らぬ男とデートに行かせたことについては探偵も同罪である。
痛いところをつかれ反論の余地がなくなった探偵は大人しく席に戻ってエロ本を開くことにした。
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