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再び壱花の脳内はパニックに陥った。このままでは、この小説を最悪『さくらんボーイ探偵と男色助手』などという物騒なタイトルに改題しなくてはならないかもしれない。
それだけは阻止しなければ。
「日間野さん、晴山君を助けに行きましょう!今ならまだ間に合うはず!最悪の事態(改題)だけは避けなくてはッ!」
「ああ!最悪の事態(男に目覚めた助手に襲われる)だけは回避しなければならん!!行こう二豪君!」
最早2人の心配は斜め上を向いている。
頷きを合図に2人が走り出そうとした時、今度は別の誰かが立ちふさがった。
「どこに行くんだ、お2人さん。このアタシの目の前で授業をサボってランデブーするつもりかい?」
腕組みをしながらドスの利いた声で告げるのは、壱花のクラスのゴリラ裏番長(またの名をシルバーバック)と恐れられている銀閣寺嶺子だ。
彼女の両脇には、猿顔の屈強なゴリラと犬顔の屈強なゴリラが立っている。
探偵はゴリラ三体から発せられるあまりの迫力に悲鳴を上げ壱花の背後に隠れた。
「ごり、銀閣寺さん……!お願いそこを退いて!晴山君が危ないのよ!」
「晴山ァ?誰だいそれは。アンタのコレか?」
親指を立て、薄ら笑いを浮かべるおっさんみたいなゴリラ番長。その両脇のゴリラもニヤニヤと下品に笑う。
壱花の顔を冷や汗が伝うが、同時に思わぬチャンスだと思った。壱花は眉をしかめ、決心を固めると大きく唾を呑み込んだ。
「……そうよ」
「あ?」
ゴリラの笑いが止まる。
「私のオトコが危ねぇからさっさとそこ退けっつってんだよォこのゴリラ女がァアッ!!!」
壱花のド迫力の叫びに呆気にとられる三体のゴリラ達と探偵。
壱花はその勢いでゴリラの間を走り抜けたが、ゴリラは放心したように動かなかった。先に我に返った探偵が壱花の後をこそこそと追いかけたのだった。
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