考察: 高梨蒼妃と彼女について

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「あはははははは」 涙を流すほどに爆笑しながら屯所中を走り回る蒼妃。 「蒼妃テメェ待てっつてんだろォォォ!」 そしてそれをまさしく鬼の形相で追いかける鬼の副長。 おどろくなかれ。いつもの光景だ。 その証拠に廊下を歩いている隊士たちは慌てる事もなく自然な動作で二人のために道をあける。というか、巻き添えを恐れて避けている。 「……いっつも思うんだけどよォ、蒼妃って足速ぇよな」 中庭に面した縁側に座って茶を啜っていた新撰組十番隊隊長・原田左之助は、向かいの廊下を全力疾走する蒼妃と土方を見て、隣に座っている青年に言った。 長身でしっかりと筋肉のついた原田の隣に座る青年は、良く日に焼けた彼が隣にいるせいで病的なまでに色白に見える。 「しかも着物を着崩さずに…ですからね。かなりのモノですよ」 団子を片手に答える青年もとい、沖田総司。 彼は一番隊隊長にして新撰組で一、ニを争う刀の使い手。倒幕派の連中には鬼神と恐れられる若き天才剣士だ。 そんな彼らの背後を、まだ笑いのおさまらない蒼妃と、いつの間に抜刀したのか真剣を振りかざす土方が走り去る。 「…………何にしても、平和ってことか」 「ですね」 遠くから聞こえる笑い声と怒声を聞きながら、ニ人はのんびりと団子を食べ始めた。     
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