「転職王」、はじめての職探し

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 97年4月、大学を中退した僕は職探しを始めた。  21歳だった。  生まれて初めて手にした「フロム・エー」をパラパラとめくっていくと、世の中にはこんなにもたくさんの仕事があるのかと一瞬、圧倒された。 「高収入」というカテゴリーの最初のページに、「学歴不問 やる気があり、ガッツのある人 急募!!」という囲み記事があり、それが僕の目にとまった。  広告主はA産業という空調関係の掃除を業務にしている会社だった。  日給10000円以上という条件だったので、「普通に働けば月収20万は稼げるな」と思い、早速、応募した。  当時、僕は東中野のアパートに引っ越したばかりで、家賃は63000円だった。  きちんと生活費を計算していたわけではないが、月に20万円あれば生活できるだろうと大雑把に考えていた。  だから月に20万円稼げるなら正直な話、どんな仕事でもよかったのだ。  大学在学中は新聞奨学生をしていて新聞販売店の寮に住んでいたので、食事にも、生活費にも困ることはなかった。  したがって、本格的に一人暮らしをし、自活するのはこれが初めてなのである。
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