「転職王」、はじめての職探し

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 彼は床に散らばっているネジを一つずつ拾い上げ、さっきまでネジが入っていた空箱に戻し始めた。 「なんで、今、ばらまいたばかりのネジを、また元に戻しているんですか?」 と僕は尋ねた。  すると、彼は渋みのある声で答えた。 「これが今日の仕事さ。おい、臼井。お前は今日、俺と一日かけて、この仕事をやるんだよ。俺は毎日、同じことをやってるんだからな」  分類されていたネジをわざわざ撒き散らしておいて、再び集めていくのが仕事だって??  僕は当惑したが、ふと思った。 「これは根気を試されているに違いない!!」  この会社では、一見、無意味に思える仕事でも、それをしっかりとやれる人材が必要とされている。そして、荒川さんは、きっとその調査員なんだ。  そう勝手に前向きな解釈をした僕は彼と一緒にネジを拾い始めた。  手が鉄臭くなり腰が痛くなったが、これがお金を稼ぐということなんだと思い、黙々と作業を続けた。  といっても、作業は30分程で終わり、荒川さんは人の良い農夫のような笑顔を向け、 「今日はやけに早く終わったなぁ。いつもは昼過ぎまでかかるのに、まだ10時じゃねぇか」 と言った。
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