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仕事が早く終わったということで、休憩室でお昼までテレビを見て、12時になると昼食をとり、13時まで休憩。
13時からは午後の仕事があるのかと思ったら、この日の作業はもうないらしく、終業時間までの間、荒川さんと高校野球の話をしたり、歴史問題について話をしたりして時間を潰した。
翌日、僕は出社すると、前日の仕事の意味について上司に尋ねた。
「昨日の倉庫内作業のことなんですけど、あれって、どういう意味があるんでしょうか?」
上司の答えは一言だった。
「ない」
「え、ないってどういうことですか?」
「だから、ないものは、ないんだよ」
「でも、荒川さんは毎日、あの作業をやってるんですよね?」
「あ、彼ねぇ、彼は極端な仕事ができないんだ……」
荒川さんは仕事ができないにも程があり、オフィス内にいると、他の社員に迷惑がかかるということらしい。だから、彼は倉庫で毎日無意味な作業を続けているのだった。
今から考えると、あれは荒川さんに自主退職を勧める戦略だったのだと思う。
その話を聞き、A産業に得体の知れない恐怖を覚えた僕は、その翌日から仕事に身が入らなくなった。
そして、僕は辞めるタイミングを探し始めた。
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