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そんなある日、赤坂の「Aヒルズ」という高級な建物の一室を清掃する仕事をチームでやることになった。
上司の話ではそのフロアは家賃が月300万円もして、作家や芸能人が住んでいる建物だから、くれぐれも粗相のないようにとのことだった。
「家賃が月300万だって??すごいなぁ、いつか作家や芸能人になってそんな部屋に住みたいなぁ」という気持ちと共に、
「もし、何か部屋の物を壊したらとても弁償なんてできないぞ、辞めるなら今だ!」
という気持ちになり、僕は適当な理由を言って、その日の内に上司に辞めることを申し出た。
A産業はアルバイトの出入りがかなり激しい会社らしく、あっさりと辞めることができた。有名人に会うこともなく、Aヒルズを堪能することもできなかったのがちょっぴり残念だったけれど……。
こうして僕の社会人になって最初の就職は一週間で幕を閉じた。
アルバイトとはいえ、あまりにも早い退職。これを少しだけ反省した僕は仕事について書いてある本を買ってきて読んでみた。
タイトルは失念したが、竹内均氏の本だった。
そこには、「好きで、それで食べていけて、世のためになる仕事をしなさい」と書いてあった。
なるほどと思ったものの、どんな仕事でもいいから働かないと僅かな貯金が更に減る一方なので、また「フロム・エー」を買ってきた。
某人気歌番組の大道具の仕事にも興味があったが、計算したら月に13万円くらいの収入にしかならないので、結局、また高収入のページにたどり着いた。
次に僕が選んだ面接先はナイトクラブだった。
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