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目が覚めたら晴はいなかった。
テーブルにメモが置いてあるだけで、昨日晴がまとめてパンパンになった大きなバッグはもう無くなっていて、もういっちゃったんだなって思った。
心の中の大きなものがいなくなっちゃうと、こんなにもどうすればいいか分からなくなるもんなんだなぁって思って。蜜くんに連絡したいけど晴との約束破るわけにはいかないから、なぁ…。
窓の外に、降り注ぐ雨。
「行って来ます、愛してるよ、俺の凛。ずっと凛のこと想ってるからね。約束、守れよ。晴より」
比較的整った字で書かれている、逆らえない、晴には。絶対に、逆らうことは出来ないと思う。メモを読んだ瞬間、すぐそこに晴がいる気がして、だから見たらやっぱり晴がいるわけなくて。寂しくなって、またベッドに行った。
晴の顔が、頭から離れない。
「は、る………」
晴がいないと何をすればいいのか分からなくて、ただ寝転がってる。好きなの、おいらは晴が。どんなにおいらの存在を罵倒されたとしても、おいらは晴に着いて行くことしか出来ないと思うから。
ボーッとしてるとおいらの携帯が鳴った。
“ババァの乳首かよ!ババ…”
ふぅ、あ、蜜くんからだ。
「晴、とうとう行っちゃったね。晴のこと応援する会として今日集まらない?」
メール…返信していいのかな。
大丈夫だよね、蜜くんは大事な人だし無視することなんて出来ないから。晴との約束は、多分話しちゃだめっていうことだから、メールぐらい返していいんだよな……。
「ごめんね、今日は予定があるんだよ。」
少し、胸がじわりと寂しい色に染められた。
何でだろうね?
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