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――今日お母さんがね、
外が真っ暗になり、蝉(セミ)が五月蝿(ウルサ)く鳴いている。
時計の短針が10を過ぎようとしていた。
僕はベッドへ寝転がりながり春から付き合い始めた彼女と電話中
夕方まで学校で一緒に居たけれど、少しでも時間を共有したくて毎日の様に電話やメールをしている。
内容は他愛のない事ばかりだけど、それでも言葉を交わせるのが幸せで。
もっと彼女の話を聞きたくて、うっかり長電話
通話料なんて頭の隅にすら存在しない。
――それでねっ、
楽しそうに話す彼女にうん、うん、と頷きながら続きを促す
ああ、やっぱり幸せだな
――プツッ‥、ツー‥ツー‥
話の途中で突然切れた電話
「あれ?」
不思議に思って掛け直してみる。
――電源が切れているか、電波の‥
充電が切れたのかな
突然訪れた静閑(セイカン)に、ぼくは胸を締め付けられた。
ぼくたちはこの小さな機械と電力が無ければ連絡をとることすらままならない。
なんて無力なんだろう。
♪~
静かな空気を割く様に鳴ったインターフォン
面倒臭気に扉を開けば
「へへ、来る途中に切れちゃった」
真っ暗な画面の携帯を持った彼女の姿
会いたい、会えない。
そんなのは只の自己暗示。
fin..
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