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厳選された美しい赤いスーツには、彼女の愛用している香水の香りが漂っている。
しっかりとした女性の形を残しつつも、一児の母とは思えない細身のスタイルは、食事に気を使いつつも忙しい毎日を送ってきた日々が体現されたようだった。
彼女はやがて、思い出したように腕の時計を見た。
今日は何時に家に帰れるのだろう。
結衣の肩の長さで切りそろえた髪の毛が僅かに揺れた。
〈やはり、あんな保育所に、あの子を預けるのではなかった〉
彼女は、窓ガラスに手のひらを当て、手に伝わった冷たさを楽しんだ。
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