きっとそれは運命だったのかも

8/24
前へ
/139ページ
次へ
「残念だったな。明日葉ちゃん狙えば勝てるとでも思ったか?まあそれは無理だがな。この俺、柴勇人(シバユウト)がいる限り和也の大切なもんにゃあ、傷つけさせねえよ」 「まあでも柴くんの提案のせいで私は刃物を突きつけられてるんだけどね~」 女の子の柔肌に傷でも付いたらどう責任とるのだい?と文句を突き付ける明日葉に勇人は苦笑しながらも右腕を引き、左手を置いてる梅の肩を力強く引き寄せた。 「まあそれはこれでチャラってことでお願いしますわ」 「しょーがないねー」 勇人に引き寄せられた梅の顔にまるで吸い込むように右拳が沈められ、弾けるように梅はその身を飛ばせた。 そしてその身が向かうは 「オーライ。バッチコーイ……」 バットのように木刀を構えた和也。もともと勇人がいるので和也は明日葉のことを心配したりはしない。それほどに和也は勇人に信頼を寄せているのだから。そして梅が余裕磔磔で明日葉にナイフを突き付けている時に和也は背後で肩を回していた勇人と目でアイズを送りあっていた。 その内容は 俺吹っ飛ばすから後よろしく。 オーライ。暴投は勘弁だよ? まるでこれから野球でもやるかのようなやりとりをしていたのだ。もちろんそれに明日葉も気付いていた。か弱い女性がピンチな時にそんなやりとりををする男子二人に冷ややかな視線を送ってもいた。 「ホーム……ラ!!?」 ただ和也が梅をカットばそうと木刀を振りかぶったその時。 淡く光るコンクリートの地面。和也を中心に離れていた勇人明日葉、それに不良達まで範囲にキラキラ光り輝く円が描かれた。 驚愕に言葉を止め、和也は地面を見た。そしてまるで染みるように和也を中心に広がる不可不思議な文様。白いシャツに真っ赤なカレーをこぼすように。灰色のコンクリートに光り輝く文様が染みて行く。 「なんだこれ!?」 「和也っ!!?」 勇人が叫ぶ。和也はそれに反応し和也を見た。今だ宙に吹っ飛ばされてる梅が邪魔で勇人が視界に入りズラいが、ゴミでも払いのけるように梅を回し蹴りで払いのけ、和也と勇人の目線があった。 だが時すでに遅く。語る時間も用意されいない。黒い黒い真っ黒な歪みが喰らうように、飲み込んでいくように、和也は“落ちた”。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2930人が本棚に入れています
本棚に追加