思い出と幻想と

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8才になった頃、父がまた離婚をして、次は10才。4人目の母がやってきた。 10才の俺は、さすがにもう母という生き物に幻想を抱くこともなく、家の誰かと深く関わることもなく生きていた。 「初めまして、ナオトくん。名前、カタカナなのね。神崎家の先代様がオランダの方だったからかしら?神崎の家の直血って残っているのかしらね?」 その母はやけにおしゃべりだったというのが、俺の第一印象だ。 貿易で名をあげた名家、神崎の家は国際結婚を繰り返してきたらしい。 祖父はオランダから日本に養子にきた人だ。 母は外国2ヶ国のハーフ、更に俺の父が純粋な日本人で、俺は国籍は日本でも多種多様な血が流れている。 新しい母は俺の顔をまじまじと眺めて、にっこりと笑う。 「ナオトくん、美少年になりそうね。私のこと、お母さんではなくて、奈己さんって呼んでね」 そう、彼女は俺の体にふれて言った。 初めてまともな母となるかと思えば、この母は色情魔だった。 しかもショタというか。 俺は彼女にセックスを教えられ、夜の相手をさせられた。 断る力を俺は持たなかった。 今までの経緯から、断ると2度と俺に声をかけてくれないような気がして。 そう。ほとんど一人で生きていたくせに、まだ甘えた感情を持っていて、まだ心のどこかで求めていた。 俺を大切にしてくれる人。 俺を守ってくれる人。 彼女は…、だけど、そんな母のような接し方ではなかったし、セックスもしたくはなかったのに…ほぼ強要されたようなものだ。 声にも言葉にもならない、この世から消えてしまいたいと思う気持ちを抱えて、13の俺は35を超えた女を毎晩のように抱く。 吐き気がした。 けれど…、俺には他の居場所はなかった。 無力だった。 生まれ落ちる場所は誰にも選べない。 もしも俺が神崎の家に生まれなければ…。 もしも俺が混血でなければ…。 自分の顔が大嫌いで、自分の生まれ落ちた場所が大嫌いで。 彼女を抱いたあと、シャワーを浴びながら自分の腕に爪を強くたてた。 助けてと、誰にも言えない声を喉の奥に閉じ込めて。
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