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「今夜は一段と月がきれいだな、フォルよ。」
たくましい体つきの威厳のある男が言う。
「そうですな。……月も祝福してくれてるようで。」
フォルと呼ばれたこちらの男は更に体格がよく、大男と呼べる程背が高い。
熊をも倒せそうな風貌ではあるが、顔立ちは若く二十代後半であろう。
城下町の見渡せる白のタイル張りのテラスから二人の男は夜空を眺めている。
「スィルエの体力が心配だ。」
男の一人が月を見つめたまま言い、フォルが相づちをうつ。
「…本当に。」
「オギャァァァァ!!」
赤ん坊の声がテラスまで響いてきた。
と、同時に男たちは走り出す。
「スィルエ!!大丈夫か!?」
叫びながら扉を開け飛び込んでくる。
赤ん坊を抱いている助産婦が応えた。
「陛下…王子様はお元気なのですが……」
陛下と呼ばれた男はベッドに横たわる女に駆け寄った。
「……陛下。…世継ぎにふさわしい元気な男の子ですよ。
…どうかご立派に……陛下。
この…私のロザリオを王子に…私が王子を見守ります…」
スィルエと呼ばれた女は握りしめていたロザリオを王に差し伸べた。
「何を言って…!?」
女の手はベッドの上に力無く落ちた。
「スィルエ!!逝くな!!待て!!待ってくれ!!……」
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