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そこは颯爽とした風が吹き、木々や草花が揺れるのどかな草原地帯だった。
ほんの数日前までは。
現在
「ッアアア!」
「ううっ……アアアッ!」
入り乱れる、二つの異なる紋章の装備をした人々、それが武器を各々持ち、争っていた。
刺し、斬り、えぐり、潰す。
草花は潰れ、ただ鮮血だけが飛び散る。
「帝国がっ……死ねっ!」
「貴様らごときが歯向かうかっ!」
それは大陸の中にある帝国と王国の争いだった。
帝国軍は赤をメインとした鎧であり、王国軍は青をメインとした鎧であった。
互いに剣を交え、或いは鈍器で相手の頭を叩き潰す。
戦況は互角だった。そこで帝国軍の隊長が指示を出す。
「〝竜騎兵〟をだせ!」
その一言で、後方で待機していた、赤い翼や鱗を持った、真紅の竜が長い槍を持った兵を一人乗せ、翼をはばたかせ、飛び立つ。
兵士は竜を意のままに操っていた。
そのまま竜は高く飛び、上空から王国の兵に襲い掛かる。
「ッアアアアアアッ!!」
竜の爪にて引き裂かれ、或いは捕まれ、その身は投げ捨てられる。
そのまま竜は火炎をを吐く。
悲鳴と雄叫びだけが戦場には響いていた。
そんな戦いは、ある時期にピタリと止んだ。
国民のほとんどはその事情を知らない。
だが、二つの国の出入りは基本的に禁止。
直接争わずとも争っている、そんな状況だった。
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