第1話ミヤマさんと僕

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僕の彼女、ミヤマさんは多趣味だ。 彼女の趣味を一部紹介すると、手芸・料理・生け花・写真・ピアノ…といった文化系のものから、テニス・剣道・マラソン・殺人・サーフィン…などアクティブなものまで多岐に渡る。 そんなミヤマさんが、「旅行に行こう!」と言いだした。 ミヤマさん曰く、海に沈む夕日にトランペットを吹きたくなったのだそうだ。 渋いというかなんというか…。 * * * そんな訳で、僕達は有給を使って小さな港町にやってきた。 平日にやって来た為、町は人が疎らでひっそりとしていたが、「とにかく遊び尽くす」と気合い充分のミヤマさんだけはかなり騒がしい。 2人で食べ歩きをしながら町を観光したのだが、アレが食べたいコレが食べたいというミヤマさんに、僕は始終引っ張り回されっぱなしだ。 ミヤマさんは行く先々で写真や動画を撮りまくり、それをブログやツイッターに投稿しまくっていた。 観光がやっと一通り終わったところで、ミヤマさんは人を1人絞殺し、その後は2人で面白い土産物を物色して回る。 当初の予定通り、「海に沈む夕日へトランペット」もやった。 日が沈んでから、ミヤマさんは星空の下でヴァイオリンを弾く。 僕はミヤマさんの素朴な顔に浮かぶ安らかな笑顔が愛おしくて、その横顔に見惚れていた。 * * * 「ねぇ、私のどこが好き?」 夜。 旅館の布団は1組しか用意して貰ってない。 「バカな所かな。」 僕がそう言うと、隣に寝ているミヤマさんのクスクスと笑う声が聞こえてきた。 「何それヒドイ。」 「興味が湧くとすぐ首を突っ込むバカな所が可愛い。」 「好奇心旺盛って言って下さいませんこと?」 そう言いながら、ミヤマさんは僕の顔を覗き込んできた。 部屋が暗く、ミヤマさんの表情は夜の闇に塗りつぶされている。 「私のこと、好きでいてくれる?」 ミヤマさんの声は、もう笑っていなかった。 「当たり前だ。」 僕は即答した。 「こんな私でも?」 ミヤマさんの手が僕の首に触れる。 血が通ってないのかと疑いたくなるような、冷たい手だ。 「そんな君だから。」 ミヤマさんは「…そう。」と相槌を打った。 ミヤマさんの冷たい手が、つぅ、と僕の首筋を這い… 僕達はキスをした。
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