22人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の彼女、ミヤマさんは多趣味だ。
彼女の趣味を一部紹介すると、手芸・料理・生け花・写真・ピアノ…といった文化系のものから、テニス・剣道・マラソン・殺人・サーフィン…などアクティブなものまで多岐に渡る。
そんなミヤマさんが、「旅行に行こう!」と言いだした。
ミヤマさん曰く、海に沈む夕日にトランペットを吹きたくなったのだそうだ。
渋いというかなんというか…。
* * *
そんな訳で、僕達は有給を使って小さな港町にやってきた。
平日にやって来た為、町は人が疎らでひっそりとしていたが、「とにかく遊び尽くす」と気合い充分のミヤマさんだけはかなり騒がしい。
2人で食べ歩きをしながら町を観光したのだが、アレが食べたいコレが食べたいというミヤマさんに、僕は始終引っ張り回されっぱなしだ。
ミヤマさんは行く先々で写真や動画を撮りまくり、それをブログやツイッターに投稿しまくっていた。
観光がやっと一通り終わったところで、ミヤマさんは人を1人絞殺し、その後は2人で面白い土産物を物色して回る。
当初の予定通り、「海に沈む夕日へトランペット」もやった。
日が沈んでから、ミヤマさんは星空の下でヴァイオリンを弾く。
僕はミヤマさんの素朴な顔に浮かぶ安らかな笑顔が愛おしくて、その横顔に見惚れていた。
* * *
「ねぇ、私のどこが好き?」
夜。
旅館の布団は1組しか用意して貰ってない。
「バカな所かな。」
僕がそう言うと、隣に寝ているミヤマさんのクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「何それヒドイ。」
「興味が湧くとすぐ首を突っ込むバカな所が可愛い。」
「好奇心旺盛って言って下さいませんこと?」
そう言いながら、ミヤマさんは僕の顔を覗き込んできた。
部屋が暗く、ミヤマさんの表情は夜の闇に塗りつぶされている。
「私のこと、好きでいてくれる?」
ミヤマさんの声は、もう笑っていなかった。
「当たり前だ。」
僕は即答した。
「こんな私でも?」
ミヤマさんの手が僕の首に触れる。
血が通ってないのかと疑いたくなるような、冷たい手だ。
「そんな君だから。」
ミヤマさんは「…そう。」と相槌を打った。
ミヤマさんの冷たい手が、つぅ、と僕の首筋を這い…
僕達はキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!