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僕の彼女、ミヤマさんは多趣味だ。
彼女の趣味は文化系なものから、アクティブなものまで多岐に渡る。
そんなミヤマさんが職場で倒れた。
* * *
「つまり、ペットの猫が死んでから、3日間飲まず食わずで一睡もしてないと。」
「うん…。」
ベッドに寝たままのミヤマさんは、泣きはらした目で申し訳なさそうに頷いた。
そんなわけで、僕は今ミヤマさんの借りているマンションにやって来て彼女の看病をしている。
ミヤマさんの部屋は、ありとあらゆるスポーツグッズや、よくわからないフィギュアや、軍艦とか戦車のプラモデルや、様々な姿形のぬいぐるみや、趣味に関する本の数々…といったもので溢れかえっていて、洗面器とタオルを探すのも大変だった。
「仕事休めば良かったのに。」
と、僕がミヤマさんの額に濡れたタオルを置きながら言うと、
「仕事も趣味だから」
と、ミヤマさんは薄く笑った。
…ミヤマさんらしくない顔だ。
いつもバカバカしいぐらい元気なのがミヤマさんなのに…。
「なんか、元気が無いミヤマさんって、変。」
「何それヒドイ。」
ミヤマさんはクスクス笑って、それから、枕元に置いてある毛玉に目をやった。
ミヤマさんが飼ってた猫の宝物だったらしい。
「…あの子ね、ニィニィ鳴くからニィだったの。」
今にも消えそうな小さな声でミヤマさんが呟いた。
「安直な名前だね。」
そう言いながら、僕はミヤマさんの髪を撫でる。
ミヤマさんは本当にバカだ。
ペットの名前ぐらいちゃんとつけてあげればいいのに。
でも…
「本当…。ダメな…飼い主で…。」
涙を喉に詰まらせているミヤマさんを見ていると、そのニィをどれだけ大事にしていたのか、どれだけ愛していたのかがわかる。
心の狭い僕は少しニィに嫉妬するけど、そんなことはもちろんお首にも出さず、ミヤマさんの手を優しく握りしめた。
「そんなことないよ。」
僕がミヤマさんに囁くと、ミヤマさんは僕の胸にしがみついて号泣し、そのまま泣き疲れて寝てしまった。
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