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時刻は午後11時。
そろそろ作戦決行の時間だ。
「たしか、オレ達はいないことになってるんだよな?」
「ええ。今日は二人で旅行に行くって伝えてあるわ。それを聞いたとき、健太が悲しそうな顔をしたのが心苦しかったけど。
私がホントはずっと家にいることを隠すの、けっこう大変だったんだから」
文香は時々ジェスチャーを交えながら興奮気味に語る。
その話を聞きながら、オレはサンタコスチュームに着替えた。
服とズボンはもちろん、茶色いブーツに真っ白な髭。加えて赤い帽子に大きな袋という、およそサンタと判断するのにチェックする全てがセットになっている。
「似合ってるわよ、あなた」
「ハハッ、ありがとう」
ノロケもそこそこに、作戦決行のための最終確認をとった。
「健太は?」
「たぶん、ちょうどうとうとしてる時間だわ」
答える声は心なしか小さい。
文香も、さすがに直前になって緊張し始めたんだろう。
オレも変装がバレないか、内心ドッキドキだ。
「じゃ、いってくる」
「いってらっしゃい」
まるで命を賭けた戦いの場に挑むような心持ちで、オレは決戦の舞台へと続く階段を上っていった。
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