46人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前には、六畳一間の子供部屋へと続く扉。
その一枚の壁が厚い。
一度開けばもう、後戻りは不可能になる。
──オレはサンタクロース。夢を届けるサンタクロース。
頭の中で呪文のように唱え、自らに暗示をかける。
健太に聞こえないように注意を払いながら、こっそりと深呼吸もしてみた。
しかし鼻下から顎まで蓄えた偽の白髭が邪魔をし、効率良く酸素の循環が出来ない。
ああ、息苦しい。
だけどこれも息子のためだ。
オレは覚悟を決めて、ドアノブに手を掛けた。
そしてそれを強く引く。
オレの。文香の。健太の。
──家族のサンタクロース大作戦が始まった瞬間だった。
最初のコメントを投稿しよう!