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「メリークリスマース」
陽気な声をあげながら、オレは健太の部屋へと踏み入り電気をつける。
もっさりした髭のせいで声が籠るが、そこはテンションでカバーした。
一瞬ビクンと体を硬直させてから、ベッドの健太が驚いた様子で布団をはぐる。
「おじいさん……だれ?」
ふむふむ。
なかなかにして上々な反応。
どうやら正体がバレる心配はなさそうだ。
「見てわからないのかい?」
あえてすぐには答えず、自らにそれを模索させた。
「もしかして……」
戸惑うような。嬉しいような。
不安と期待を織り混ぜた声で、健太はのそりと起き上がって言う。
「サンタクロース?」
「メリークリスマース!」
正解を示す祝いの言葉をもう一度高らかに反響させ、できるだけおじいさんっぽい声で笑ってみる。
こちらを見る健太の瞳が、一気に少年らしい輝きを取り戻した。
「うわあーっ! ホントにサンタはいたんだぁ!」
ベッドから飛び下り、オレの周りを嬉しそうにくるくると回る。
親の贔屓目(ひいきめ)無くしても、やはりこういう子供はかわいいものだ。
どうやら眠気は吹き飛んだらしい。
最近の子供も健太くらい素直なら、きっともっと色彩豊かな夢を見られるだろうに。
そんなことを考えながらも、オレは作戦を続行する。
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