聖なる遭遇

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この作戦。 いうまでもなく、内容は単純明快だ。 オレがサンタクロースに化け、背負う袋に入った、健太の欲しがっているゲームカセットを渡す。 いや、今はカセットじゃなくてディスクだったか。 まあそんなことはどうでもいい。 オレも文香も、健太がプレゼントを貰って喜んでくれればいいんだ。 年を重ね、本当はサンタクロースなんていないことに気づく日もくるだろう。 だがそのときは、今日あった出来事を笑って話せばいい。 今はサンタクロースを信じ、将来的に物事の本筋を見極められる人間になってくれれば──。 と。これは文香の受け売りだ。 『サンタがいないなら、サンタになればいいじゃない』 先日の作戦会議早々、文香が意気揚々と言った言葉を思い出す。 結局それがスローガンになり、今この瞬間まで準備を重ねてきたんだ。 それがやっと実る。 「ほら、プレゼントだよ」 オレは担いでいた袋を下ろし、そこからおもむろに、キレイな包装を施された箱を取り出した。
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