聖なる息子のピンチ

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風呂から上がると、聞き慣れた着信音が鳴っていた。 オレの携帯電話だ。 素早く着替えを済ませ、何度目かのコール音の後に電話に出る。 「宏大さん。例の件、結局どうするんすか?」 ……部下からだ。 まったく。 家に帰ってまで仕事の話はしたくない。 「あ~、あれはおまえに任す」 「え~! だってあれは、元々宏大さんの担当じゃないですか。僕はもう手一杯で……」 「そこを頑張るか頑張らないかで、人間の価値が決まるんだ。とにかく任せるぞ」 「そんなぁ~!」 もっともらしい口実で電話を切ろうとしたとき。 「ねぇ……あなた?」 全身に寒気が走った。 冬の木枯らしなど足元にも及ばない、ゾクゾクとした寒さだった。
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