聖なる息子のピンチ

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通話口から、部下の心配する声が聞こえる。 「……たいへんですね」 「ははっ……まあ楽しくやってるよ」 それから適当に話を終わらせて、オレは家族の待つ食卓に向かった。 「お父さん、早く食べよ」 ドアを開けると、息子の健太が迎えてくれる。 できれば先に「おかえりなさい」が欲しかったが、あまり多くは望むまい。 「さっ、あなたも座って。皆で食べるご飯が一番よ」 「ああ」 これは家族の決まり事。 "食事は家族揃って行うこと" 仕事で一人帰るのが遅くなるオレには、なんともうれしいルールだ。 目の前には、見るだけでヨダレが出そうな品々が並んでいる。 そして。 「はい、あなた」 文香がビールをコップに注いでくれた。 このビールが一番うまい。 オレは注がれたビールを一気に飲み干し、ほろ酔い気分で切り出す。 「健太は今年のクリスマス、サンタに何をお願いするんだ?」
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