聖なる息子のピンチ

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オレは文香と目を合わす。 彼女も驚いたのか、健太にはバレないように目を見開いていた。 「どうしてそう思うんだ?」 箸をおいて尋ねる。 「友達から聞いたんだ。サンタの正体は……」 「おっほっほ。なにを言うかと思えば。健太、サンタはいるわ」 文香が半分むせながら言う。 しかし、 「どこに?」 すぐに言葉に詰まった。 「どこって……」 助けを求めるように、視線がこちらを向く。 オレは期待に応えられそうになかったので、それとなく視線を外した。 一瞬睨まれたのが気配で分かった。 「とにかくいるわ。信じる者に道は拓かれるのよ」 そして絞り出されたのは、小学三年生には分かるはずもない宗教的な言葉。 ビールを口に含んでなくて良かったと思う。
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