誕生日

4/5
前へ
/32ページ
次へ
パーティーの主役である渡邉は体育館の隅の方に座っていた 丸型のテーブルに溝口、上田、大山と座っている テーブルの上には料理の代わりにトランプが置かれている もちろん彼等の手にも数枚のトランプが握られている 「部長」 「あ、素子さん、受付ご苦労様」 話し掛けられた大山は視線を決してテーブルから外すことなく、後ろの素子に話し掛けた 他の三人も同様にテーブルから視線を外さない 「こんなとこでもトランプか」 「こんなとこだからこそだよ!」 「意味が分からん」 「黒木には分からないだろうな。俺達は常に争い続ける宿命にあるのだ!目指すはナンバー…」 「ワン!」 「そうそう、分かってるじゃないか。ナンバー…」 「わぁぁぁぁぁぁ!!」 溝口が悲鳴を上げながら、椅子ごと倒れこんだ そのまますぐに立ち上がったかと思うと、素子から逃げるように離れていった 「あれ?その犬どうしたの?」 ようやくトランプから集中が切れたのか、素子に向き直った渡邉がパァッと笑顔になった 素子に抱えられたまま、尻尾をブンブン振り回す子犬がいた 「ああ、何か知らないがついてくるんでな。とりあえず連れてきた。で、あいつはどうしたんだ?」 「あぁ、ミゾは犬が苦手だからね。というかありゃ恐怖症だな」 「まだ子犬だぞ?」 「小さかろうが大きかろうが犬がダメなんだ」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加