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――― 暗い部屋……まるで空間に闇そのものが漂っているような部屋に、一人の男と内臓の様な生々しい塊の"何か"がいた。
その"何か"は心臓のように脈打ち、男はソレを瞬きするのも惜しいと云う様子で見つめていた。
「―…もうすぐ……来る」
そう…何かが来るのだ。もうすぐ。
それはもしかしたら……生命を持った者かもしれない、兵器のような物かもしれない。
はたまた目には見えない幸福……或いは災い……
いや、いくら考えたとて無駄なこと……どうせ来るまで解らぬのだから…
ずっと……ずっと待っていた…
大樹と等しい寿命を持つ我が一族が、もはや幾年経たかも解らない……気が遠退くような、時・世代を越えて守ってきた…待っていた……
そして私も今は亡き先代から引き継いだ。
守れ、そして待て…と、
この"卵"を…―
――― 男は何かを考えているのか、目を細め"卵"を見つめていた。
暗い部屋の中は静寂に包まれ"卵"の脈打つ音さえも聴こえてきそうな錯覚になる。
そんな中で、男は呟く。
「来い」
"卵"は脈打つ。
―…来たるべき時まで後少し…―――
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