異と別

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.side無し 「《まっ、待て…待ってくれぇ!!…まだ死にたくない…!死にたくないんだよぉぉっ!!》」 数々の場を越えていたのであろう、 顔や躯に幾つもの大きな傷跡があり、筋肉を付け逞しい肉体を持つ男は、 今や血だらけになり、地面に這いつくばって目の前の人間に赦しを乞いている。 「《ふーん…そう…………知らないよ》」 しかし目の前にいる人間は無情にも手に持っているタガーを降り下ろした。 更に男の躯は赤黒く染まり、地面も染まる。 ―ワァァァァアアア! 男が息絶えた後、直ぐにあがる悲鳴…………否、歓声。 周りをよく観ると、 今の殺し合いをしていた2人を何重かの防弾ガラスで囲まれ、 その外からは高級な装いをしている人々が仮面を付け、口々に笑い声や不満げな声が飛び交う。 その人々の近くには、透けた布を身に付け躯が露になっている男女や、違法な薬が積まれた荷物、足下に積まれた大金があり、 この空間の異質さと異様さが見えてくる様に思える。 ここはヨーロッパの何処か地下にある違法のコロシアム。 世界中の金持ちの崇高なる趣味によって創られた狂喜の場だ。 このコロシアムに"戦士"として参加するのは、腕に絶対的自信があり、よっぽど金に困っている奴か、狂った奴のみ。 このコロシアムに勝利した者は、それこそ一生遊んで暮らせる大金が入る。 だが…ここで行われているのはあくまで"死闘"……敵の死によって勝利への路を切り開くことが出来る。 つまり、どんなに敗けを認めて命乞いをしようが、どんなに憐れに思おうが、殺さなければ引き分けとなり2人とも拘束され死ぬ。 .
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