桃園の誓い‐劉備玄徳

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劉備と張飛が家を覗くと男の子や女の子、老人といった年齢の様々な人たちが二十人くらい集まって、髭の立派な先生の話を熱心に聞いていた。 張飛は勝手に家に上がり込み、杯ととっくりを探し一杯やり始めた。 「まあ、貴方も一杯」 劉備は張飛から杯を受け取ると一気に酒をあおった。 「おお、なかなかの飲みっぷり。いいねぇ、気に入った」 「これはどうも」 劉備は張飛から酒を注いでもらい礼を言った。 「そう言えば先日のお礼はまだでしたな?先日はありがとうございました」 劉備は深々と頭を下げた。黄巾賊との一戦のことを言っているのだ。 「いや、いや、あんなことでお礼を言われても。たいしたことはしてねえから」 張飛は改めて礼を言われ照れくさかったらしく頭を掻いた。 「しかし、黄巾賊には困ったものですな?」 「そうですな。このままのさばらせておくのはよろしくない」 張飛はそう言うと酒をグッと飲んだ。 「おお、もうやっていたのか?」 その時、講義を終えた髭の男が笑いながら部屋に入ってきた。 「やあ、関兄ぃ。もうやっていたよ」 張飛はとっくりを持ち上げて見せた。 「そちらの方は?見覚えがないが…」 髭の塾長は劉備の人相風体を観察した。 「こちらは劉備殿。先日、知り合いになってね」 「劉備玄徳です。先日、張さんに黄巾賊と闘っているところを助けていただきました。普段は草履や筵を売り歩いています」 「そうでしたか。わたしは関羽雲長。このように私塾を営んでいます。しかし、草履を売らせておくには惜しい人材と見受けました」 関羽は鋭い眼力で劉備を観察した。  
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