桃園の誓い‐劉備玄徳

14/20
前へ
/78ページ
次へ
「さあ、観念しろ。もうジタバタしたところで逃げられないぞ」 劉備が捕まえてみるとまだ十代の若者の黄巾賊だった。 「好きにしろ。さあ、殺せ」 黄巾賊の若者は劉備の前で開き直った態度を取った。 「お前たちのアジトはどこにある?吐け」 「そんなことあんたたちになんか教えるもんか」 若者は劉備に腕を掴まれても頑として口を割らなかった。 「劉さん、絞め方が甘っちょろいぜ。俺にしめさせてくれ」 張飛はニヤニヤ笑いながら指を鳴らした。 「お、おい、何をするんだ?」 黄巾賊の若者は張飛の風貌、態度に肝を冷やした。 「何もしないよ。ただあんなこと、こんなこといろいろ教えてくれればだがな。あら、よっと!」 張飛は近くにあった白樺の巨木に力いっぱい蹴りを入れた。 木は若者の前で音を立てて倒壊した。 「ひぃぃ…お助けを」 すっかりビビった若者は腰を抜かして立ち上がれなくなった。 「よし、助けて欲しいならアジトに案内せい」 「ははは、はい」 若者はかろうじて立ち上がると膝をガクガクさせながら歩き出した。 「あんなに怖がらせなくても良かったのに」 根が優しい劉備は黄巾賊の若者が少し可哀相になったのだ。 「全く、翼徳だけは捕虜になりたくないな」 関羽は笑いながら張飛の後を歩き出した。 「ずいぶん寂れた場所にあるなぁ」 張飛が呟いた。張飛が言うのも無理のないこと。黄巾賊のアジトは村の外れのもう使われなくなった寺だった。  
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加